「都市街路スマート・モビリティ学」社会連携研究部門では、電動キックボードや自動運転技術の導入も考慮した新たな都市内街路の交通マネジメントに必要な、データ利活用の基礎理論と、SDG'sやインクルーシブ社会を実現する技術の体系化を図ります。都市内街路のリ・デザイン、スマート・モビリティの実現手法を解明し、「自由に自立して安全・快適に環境・人・まちにやさしく、皆が、モノが、サービスが移動できるモビリティディバイド※のない社会」の実現に貢献していきます。
※『モビリティディバイド』とは、自動車等の保有や運転の可否によって生活スタイル自体が制約され、移動格差をもたらす状態を表します。自動車を保有しない人、特に高齢者にとっては、買い物や病院に行くといった日常生活が非常に不便になっています。これは日本だけではなく、世界的に問題となっています。



歩きたくなる街路・使いたくなる公共交通
近年、若者や高齢者を中心に、自動車を保有しないことは珍しくなくなっています。しかし、自動車無しでも、不便なく、安心して、近くのスーパーや病院まで行ける人は多くないでしょう。
こうした移動に関する格差、すなわち「モビリティデバイド」を減らして、誰でも移動しやすい社会を実現することが求められています。そのためには、交通事故の不安がなく、快適で、歩きたくなるような街路、そして自然と使いたくなる公共交通システムを整えていくことが重要です。

街路のリ・デザイン理論
都市には、買い物客で賑わう通りも、住宅地の閑静な路地も、遠くに向かう自動車が走る幹線道路も必要です。これらの街路の使われ方は、単に行き来するだけでなく、街路沿いのお店や住宅へ出入りをしたり、バスの乗り降りや駐車のためにとまったりと様々です。
このような多様な目的を満たすように、地域の特性に合わせて、街路を体系的にリ・デザイン(再編)することが求められています。そこで役立つのは、歩道・車道空間の「しつらえ」を調整し、合わせてネットワークを機能ごとに「色分け」する理論です。

新たな街路マネジメント技術
日本では、「歩行者利便増進道路(ほこみち)制度」や「ゾーン30プラス」といった新しい施策がはじまっています。「ほこみち制度」は、道路を柔軟な目的で利用できるようし、例えば歩行者がゆっくりと佇めるようになることを意図しています。「ゾーン30プラス」は、特定の区域内における自動車の最高速度を30km/hに制限するとともに、自動車の通行量や速度を抑制するための物理的なデバイスを設置することで、交通安全を向上させるようとするものです。
こうした施策を各々が場当たり的に適用するのではなく、全体マネジメントの技術が広まるようにすることによって、誰もが安心して移動できるようになると期待されます。
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街路の様々な性能を客観的に評価する仕組みを構築し、より良い街路空間やネットワークのあり方を提示していきます。
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自動車や歩行者・公共交通利用者の誰もが快適に移動できるように街路階層を最適化する手法を提案し、自動車交通を制限するゾーンの設定指針に資するようにします。
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多様な使われ方を考慮した街路ネットワークの計画論によって、自動運転や電動キックボードといった新しいモビリティの普及にも対応することを目指します。
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街路マネジメントの理屈にとどまるのではなく、現場への適用とフィードバックを繰り返すことによって、実社会で持続的に実装できるようにしていきます。
